チーム九谷展 Ⅵ ー四季、春夏秋冬ー

チーム九谷展 Ⅵ ー四季、春夏秋冬ー

昭和四十三年、ノーベル文学賞を受賞した川端康成は「美しい日本の私」と題して記念講演を行いました。

その中で「『日本美術の特質』の一つとして、『雪月花の時、最も友を思う』という矢代幸雄(美術史家)の詩語に約められる」と言っています。

そして「雪の美しいのを見るに、月の美しいのを見るに、つまり四季折り折りの美に、自分が触れ目覚める時、美にめぐりあう幸いを得た時には、親しい友を切に思われ、このよろこびを共にしたいと願う、つまり、美の感動が人なつかしい思いやりを強く誘い出すのです。(中略)そして日本の茶道も、『雪月花の時、最も友を思ふ』のがその根本の心で、茶会はその『感会』、よい時によい友どちが集うよい会なのであります」と語っています。

美を発見し表現するということは、その感動を誰かと共有したいということであります。

私は、日本人の美も思想も、日本という自然(環境)の産物だと思っています。

その自然を最もよく表しているのが、今展のテーマでもある「四季、春夏秋冬」の風景です。


齋藤まゆさんの《結晶》は、五つの結晶体の間に小さな透かしを入れて光が感じられるよう工夫され、彼女の独自の世界を表現しています。

田村星都さんの《細字古今集和歌梅文鳥摘香爐》は、家伝の九谷毛筆細字技法による香爐作品で、散らし書きの間に細字で和歌を書き込み、梅の絵と鳥の摘みで春を表現しています。

中田博士氏の《真珠光彩壷》は、独特な輝きを放つ真珠光彩の壷で、六つの稜線が緊張感あるフォルムを創り出しています。

中田雅巳氏の《SEN 碗(黒)》と《SEN 碗(黄)》は、素地の上に異なる色の化粧土を塗り、針で線を丁寧に掻き落とした繊細な手法の作品で、口作りの歪みが独特なフォルムを作り出しています。

福永幾夫氏の《色絵細密麒麟鳳凰図水滴》は、青海波をバックに麒麟と鳳凰を九谷の五彩で描いた力作です。小品ですが、九谷の魅力の詰まった楽しい作品です。

見附正康氏の《赤絵細描小紋茶盌》は、超絶技巧と呼ばれる赤絵細描に九谷の和絵具の青を入れたモダンな図柄の茶碗です。

南 繁正氏の《蓮池Ⅰ》は、南グリーンと呼ばれる美しい緑の蓮葉と淡いピンクの蓮華に、可愛い雨蛙の取り合わせがユニークです。

牟田陽日さんの《青釉白象謳夏図》は、釈迦が生まれる際、その母は白象がお腹の中に入った夢を見て妊娠を知ったと言われていますが、白象は東南アジアでは神聖視される動物です。夏の季語である枇杷や草花が描かれた、その濃密な描写はまさに現代の九谷焼です。

谷敷正人氏の《鷺の壷》は、日本の田舎を旅すると、よく鷺の姿を見かけますが、そんな鷺に盛り花を取り合わせた新鮮な図柄です。

?田幸央氏の《金襴手彩色鉢》は、何層にも上絵を塗り重ねて生まれるモダンな意匠で、草木をイメージしたグリーンと、水をイメージしたブルーによって、自然のサイクルの不思議を表現しています。

造形で表現する人、文様で表現する人、技法は様々ですが、各々の作家が「四季、春夏秋冬」をイメージした作品が出品されます。

なかには、色や線といった抽象的な方法で表現する人もいます。

それぞれの「四季、春夏秋冬」をお楽しみください。

Artist

  • 牟田 陽日
  • 齋藤まゆ 佐藤 亮 武腰 潤 田村星都 中田一於 中田博士 中田雅巳 福島武山 福永幾夫 見附正康 南 繁正 谷敷正人 ?田幸央

Detail

会場
柿傳(かきでん)ギャラリー
会場住所
〒160-0022 東京都新宿区新宿 3-37-11 安与ビル地下2階(1階あおぞら銀行)
会期
2022年11月2日 〜 2022年11月8日
時間
午前11時~午後7時まで(最終日の11月8日は午後5時まで) 会期中無休
詳細
https://www.kakiden.com/gallery/archives/56242/
在廊日
11月6日(日)