About
漆•棉•貝殻を使い、変塗技法を用いて、生命が生から死まで、さらに再生する生命の循環に対する 思考を作品化したものである。
この作品には青色系、朱色、黄色、白色または 卵殻粉を用い、多色と材質を組み合わせて塗り重ね、研ぎ出すという変塗技法により、砂浜海岸の景色を表現した。
この作品を通じて表現したい世界観とは、生と死との両方が表裏一体で共存していることである。
生命は永遠に成長していくことが出来ず、いつか必ず消えてゆき、土に戾り、また次の生命が育つための栄養になることである。
生と死の両方が含まれる生命体が死んだ後に自然に戾り、土に埋められ、腐敗しても、骨か残骸にはかつて生きていた痕跡 が必ず残る。
それらの生きていた証が自然の中には散在しており、自然環境と融和し、再び新たな生命の「塊」となる。
この作品では、漆•棉•貝殻を用いることで、生命の痕跡である貝殻とそれらが存在していた砂浜海岸の環境を再 現した。
ここに「再現」という言葉を使ったが、厳密にいうと、変塗を用いながら、漆の色彩と質感により貝殻が散らばる砂浜海岸の雰囲気を喚起し、自分自身が生命に対する思考を他人と共有する場を意図した。
この作品において は、極めて私的な物語、あるいは世界観を表象する際に、変塗は装飾技法としての存在感は減りながら一方では具体的な場所あるいは物語の中へ観者を誘う ことに役立っていると考える。
Artist
翁 欣羽
WENG Xinyu